「Go To キャンペーン」は観光復興への第一歩だったが。。。延期で想像以上のダメージか。

牛尾 晃汰

広報/PR

2020年6月19日

東京アラートが解除され、ライブハウスや接待を伴う飲食店など「ステップ3」に該当する職業の営業が感染防止策をとった上で再開されました。少しずつ「ウィズコロナ」の新しい生活様式に慣れた人もいるのではないでしょうか。しかしまだまだ自粛ムードは継続していると言わざるを得ません。先日、日経新聞社が大阪の飲食店に対して緊急事態宣言解除後の売り上げに関する調査を行いました。調査を実施した実に7割が前年度比に比べて売り上げ高、半減と答えており自粛期間中だった4月に比べては回復しているものの依然厳しい状況が続いています。そんな中、政府が打ち出した「Go To キャンペーン」は、観光を含めた飲食、イベントなど復興への一打となる事業が延期となったことで更なるダメージを被ることになりそうです。

<延期となったGo To キャンペーンとは>

「Go To キャンペーン事業」とは、新型コロナウイルスの影響で経済的に大打撃を受けた観光業や飲食業、イベント・エンターテインメント事業などを支援し、さらに需要を喚起するために行われる取り組みです。

災害等により旅行客が減少した地域の活性化のために行われた「ふっこう割」と同じような施策で、今回は日本中を対象としてこれまでにない予算規模で実施される予定でした。

▼「Go To キャンペーン4事業(区分はいずれも仮名)」

  1. Go To TRAVEL
    旅行業者などを経由して期間中の旅行商品を購入した消費者に対し、代金の2分の1相当分のクーポンなど(宿泊割引に加え、地域産品、飲食、施設などの利用クーポンを含む)を付与(一人1泊当たり最大2万円分)。

  2. Go To EAT
    オンライン飲食予約サイト経由で、期間中に飲食店を予約、来店した消費者に飲食店で使えるポイントなどを付与(最大一人当たり1,000円分)。また、登録飲食店で使える食事券(2割相当分の割引など) を発行。

  3. Go To EVENT
    チケット会社経由で、期間中のイベント、エンターテインメントのチケットを購入した消費者に割引、クーポンなどを付与(2割相当分)。

  4. Go To 商店街
    商店街などによるキャンペーン期間中のイベント開催などに商店街当たり最大300万円を支援、複数商店街による広域のプロモーション、 観光商品開発などを行う場合には最大500万円を上乗せ可能となる。

しかし野党は厚生労働省が新型コロナウイルス感染症対策に充てた6,695億円と比べて、このキャンペーン(総額:1兆6,794億円)に充てる金額が巨額と指摘。更に事務委託費の3,095億円の使い方が「不透明」とし委託先の公募を中止し、当初報道されていた7月下旬の開始予定から大幅に遅れることが確定しました。

<個人経営、地方事業者への打撃は想像以上のものか>

今回の事業に期待をしていた事業者も多かった反面、落胆も大きいでしょう。「観光に予算をかけるより国民生活に予算をかけるべき」など批判のある中、私たちは、このキャンペーンを早く実施する必要があったと考えています。一日も早く実施すべきだと考える理由は「気持ち面」と「経済面」の2面が存在します。

まず気持ち面ですが、以前のコラムにも書いたように近場への観光が第1に呼び戻る層として期待されると書きました。そして実際に大都市圏では徐々に復活しつつありますが、地方ではまだ旅行をしてはいけない「空気感」が存在します。私も東京での自粛期間を経て実家のある地方に戻り、近所の商業施設に他県ナンバーの車があると気にするという地元民が多くいるように感じました。自粛期間を受け入れた国民の意識を「外出しても良い、旅行しても良い」という空気に戻すのは簡単なことではありません。そんな「旅行は悪」というイメージを払拭するキャンペーンとして実施する必要があったのではないでしょうか。

次に経済面ですが、観光客の減少に影響を受けたのは飲食店、宿泊施設や旅行代理店に限った話ではありません。漁師や農家の場合卸先であった宿泊施設で使用されるはずだった魚や野菜が行き場を失ってしまいました。他にも店舗や宿泊施設を整備する設備会社など、観光客が激減することで何重にも渡って経済状況に影響を与えてしまいます。特に宿泊施設は上記全てに密接な環境にあり、集客装置としての役割を果たしているため宿泊施設が復興しない限り地方経済の産業が失われてしまうのです。

日本旅行業協会(JATA)が発行する「数字が語る旅行業2019」によると、2016年の国内での観光消費額は26.4兆円で、生産波及効果は53.8兆円、雇用効果は459万人、税収効果は4.7兆円にも達する。15歳から64歳の「生産年齢人口」は約7,545万人で、働く人の約6%は何らかの形で観光業による恩恵を受けていることになります。

キャンペーンが遅れれば遅れるほど巨額の経済損出が生まれ、キャンペーンにかかる予算は更に大きくなり実施へのハードルが上がってしまいます。

今回の遅延で「観光に携わる地方事業者」に対して大きな影響を与えることは間違いなく、1日も早くキャンペーンの実施が行われることを祈るばかりです。

参考:

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