牛尾 晃汰
広報/PR
2020年2月13日
本コラムでも多く取り上げている東京オリンピックですが、もちろん多くの外国人が来日することで1人あたりの消費額が大きくなったり、東京を観光した後に地方へ旅行したりとすることも予想されます。またオリンピックは日本という国をメディアを通じて世界に発信するチャンスでもあり、新しい客層を取り込むことにも期待ができ、観光大国への大きな1歩になることに間違いはありません。
しかし、今回のオリンピックでは「持続可能性(サステイナビリティ(*以下:サステイナビリティ))」という別の側面で日本のイメージアップを図ろうとしています。サステイナビリティという言葉にしっくり来ない人も多いのではないでしょうか。私個人の見解ではサステイナビリティは「もったいない」、「再利用」という表現が1番マッチするように感じています。環境に悪影響を与えないために資源を無駄にせず繰り返し使うことや、ゴミを分別したり、食べ物を粗末にしないと言った「もったいないと思う気持ちと知恵」を実践し、未来に繋げていく活動をサステイナビリティと呼びます。
では、なぜ東京オリンピックでサステイナビリティを前面に出していこうと考えているでしょうか。現在日本は気候変動や天然資源の枯渇、差別等の人権問題、持続可能性に関する世界共通の課題に直面しています。特にCO2排出量、食品ロス、プラスチック問題は連日多くのメディアでも報じられており、先進国の中でも他国より遅れを取っています。そういったイメージを払拭し、イメージアップを図っているのでしょう。そしてオリンピックは未来に繋がる「レガシー(遺産)」が生まれる場でもあります。前回の東京オリンピックでは食料調達が課題になり「冷凍食品」が生まれ、オリンピック後に急速に普及したと言われています。
そこで今回は「食料」、「建築・再生可能エネルギー」からサステイナビリティがどのような影響をインバウンドに与えるのかを見ていきましょう。
まずスポーツとサステイナビリティには、どのような関係性があるのでしょうか?2012年のロンドンオリンピックでは、1,500万食以上が提供されました。しかし一方で、1,500tに上る食品ロスがあったと言われています。このように多くの人が集まる行事において、サステイナビリティへの対策を取らずにはいられない状況なのです。そして生産者や納入業者は「持続可能性(サステイナビリティ)に配慮した調達コード」という規約が策定されており、規約を遵守することが求められます。
▼持続可能性(サステイナビリティ)に配慮した調達コードの内容
また、東京オリンピックのビジョンの1つでもある「多様性と調和」は、もちろん飲食にも適応されます。実際に2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、選手村内の飲食スペースは6つのジャンルに分けられ、地元のブラジル料理のほかに、アジア・インディア、ハラール、ピザ・パスタ、サラダ・デザートなどのゾーンが設けられました。先に述べたように前回の東京オリンピックでは、「冷凍食品」というレガシーが誕生しました。今回は「冷凍食品」のような直接的なレガシーが飲食の分野で誕生するかは不明ですが、ベジタリアン、ヴィーガン、ハラールやグルテンフリーへの対応が遅れている日本で、間接的な影響で食の多様化に対応する店舗が増えるのではないでしょうか。
<建設・再生可能エネルギー>
建築においては、前回の東京オリンピック時に作られた選手村が改修を経て「国立オリンピック記念青少年総合センター」として生まれ変わったり、冬季オリンピックの会場となった札幌、長野の選手村は賃貸や公営住宅として利用されています。晴海に作られた今回の選手村は18ヘクタール、合計5,650戸の規模を誇ります。そしてオリンピック終了後には、「環境先進都市」になることを目標に掲げています。具体的には一般住宅の他にも、サービス付き高齢者向け住宅、若者向けシェアハウス、外国人向けサービスアパートメント等が計画されています。世代や国を越えた居住者を想定した街作りを目指していることがわかります。
前のコラムでも述べたように、観光客の増加が予想されると同時に日本に住む外国人へのWifi、外国人にあった商品開発サービス展開が市場として伸びるのではないでしょうか。
最後に再生可能エネルギーとリサイクルについてですが、日本は火力発電がメインで先進国の中でもCO2の排出量が多く、環境に優しい都市作りを進めて行く中で再生可能エネルギーへの取り組みは重要な課題になっています。現在の選手村では、オリンピック後に次世代型のエネルギーの活用を考えており、水素ステーションや次世代型燃料電池の利用など、水素社会の実現を目指し、再生可能エネルギーを活用したエネルギーマネジメントを実施、また家庭用燃料電池の導入も検討しているようです。
参考:
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