訪日外国人旅行におけるデジタル旅行事業戦略

牛尾 晃汰

広報/PR

2020年2月13日

旅行業界は世界的に最も大きな業界の一つで今尚成長を続けています。全世界での合計旅行消費額は2010年には1兆米ドルでしたが、2016年には約50%増となる1.45兆米ドルにまで成長しています。Statista.comによると、2016年の数字に間接的な経済効果も含めると、7.6兆米ドルもの影響を世界経済に与えています。国内も同様に、訪日外国人旅行事業が急激な成長を見せています。2010年に1.15兆円だった合計訪日外国人旅行消費額は2018年には4.52兆円まで成長しています。(Statista.com参照)

<デジタル旅行においての消費段階>

「デジタル旅行」とは、消費者が目的地に興味を持った段階から旅行が終わるまでをオンラインで支援する旅行のことです。私が経営する会社では、旅行会社には重点を置くべき4つのポイントがあると考えています。

①検討段階(Exploration Phase)
旅行の3~6ヶ月前に行われる、検討している目的地の情報収集。

②予約段階(Booking Phase)
目的地が決定し、交通手段や宿泊先を手配する段階。

③旅行段階(Travel Phase)
目的地での天候や交通機関等の想定外の出来事への対応。

④旅行後段階(Post-travel Phase)
帰国後、旅行の思い出やを友人や家族に伝える「口コミ」段階。

上記4つの段階でOTAが利益をあげれるのは【予約段階】です。旅行者が予約をする際に良い体験になるかどうかが最も重要ですが、多くの商品がある中で注目されるのはとても難しいです。必然的に、成功できるかどうかの決め手は下記の通りです。

①素早く、正確で、幅広く、内容の詰まった情報

②オンラインで購入可能かつ支払い方法が簡単な商品及びサービス

③即時対応の予約確定、達成状況、最新情報更新

次はデジタル旅行事業について、消費者からの視点で考えていきます。観光庁が四半期毎に行っている訪日外国人消費動向調査の2019年7月〜9月期の調査結果によれば、訪日外国人旅行者の内の69.8%がオンライン旅行会社(OTA)等のウェブサイトを通して旅行の予約をしています。26.4%が旅行代理店などで航空券を含むセット商品を予約をしています。仮に日系旅行会社がオンラインでの事業に失敗してしまうと70%もの消費者を外資の競合他社に明け渡すことになります。

残念なことですが、日系旅行会社の中に世界的なオンライン旅行市場での成功を収めている会社は現在ありません。【検討段階】では訪日旅行者向けのウェブサイトがいくつかありますが、電子商取引(e-Commerce)においては大手外資系企業と大きな開きがあります。

<消費者側からの視点-ホテル>

まずはホテル業界を見てみましょう。オンライン旅行会社を経営している者として言えることは、日本へ初めて訪れるほとんどの訪日旅行者は共通した心配事を持っています。どのように航空券を予約するのか。宿泊先はどこにすべきか。滞在先で何が出来るのか。何を食べれば良いのか。移動手段はどうするのか。訪日旅行者は計画中に上記のような心配事を持つことがありますが何故でしょう。理由としては旅行者が計画第一段階ではまだ旅行の実現性について深く考えていないからです。旅行の第一段階の多くは、現実逃避をしたいという衝動で、漫画やアニメ、音楽、歴史、食文化等に興味を持って旅行の計画を始めます。これらは旅行の実現性にはあまり関係ありませんが、旅行をしたいと思わせる強力な動機です。もう一方で、実際に旅行を予約する際には身体的な快適、不自由さなど交通手段のことについて心配する人が多いです。大手外資系オンライン旅行会社は消費者動向を理解し、予想することが出来る技術を既に持っています。そのため旅行者が一番支出する航空券とホテルを中心に、綺麗な写真と内容のツアーや便利な移動手段をセットにして販売し、消費者に衝動買いへ誘導しているのは単なる偶然ではなく、計算された戦略なのです。

<なぜ外資系オンライン旅行会社がホテル予約事業を支配しているのか>

世界的にもホテル事業は急激に成長しており、日々世界中で数千もの事業者が参入しています。そして全ての事業がどちらかの経営方法に当てはまります。巨額の投資を受け、時間と費用を費やして提携先ホテルの客室在庫を獲得し、手頃な価格で再販売する方法。代表的な例として、Booking.comやAirbnb等が挙げられます。既に客室在庫を保有している各国の卸売業者と提携して、値引きと引き換えに大量仕入れをする方法。代表的な例としては、Hotelbeds.comやAmadeus等があります。私の見解では、ほとんどの大手日系旅行会社が外資系オンライン旅行会社との競合を諦めてしまい、代わりに卸売業を担っているように見えます。安定した収入があり、オンライン旅行事業への円滑な参入を意味します。基本的に、ホテルの客室管理は全てAPI(Application Programming Interfaces)というソフトウェア同士がやり取りするための媒体を通して行われています。現在APIは旅行業界で国際的に必要不可欠な要素になっています。大手日系旅行会社の中には自社ブランドで競合したいと考えている企業はもちろんいます。しかし現状を見た際に、海外進出を目指している企業の大半が国内消費者への一点集中と国際的な取引や市場調査、企画能力不足により不利な立場に置かれています。正直、私も不利な立場に置かれている企業が、企業買収に頼らずに世界的な大手オンライン旅行会社に成り上がることは困難だと考えています。ましてや、外資系オンライン旅行会社の卸売業を担っているのでは尚更のことです。事実、外資系オンライン旅行会社は国内ホテル業界の売上高で高い市場占有率を占めています。訪日外国人旅行者を受け入れているホテルチェーン(日系ホテルチェーンと民宿の約50%は海外からの予約に直接対応していない為)との議論をした結果、私に出来る最良の推測では、国内で訪日外国人旅行者に販売されているホテル客室全体のおおよそ50〜60%がBooking.comとその系列会社、ExpediaやAirbnb上で購入されています。外資系オンライン旅行会社は国内の競合社よりも高い手数料を取ることで知られていますが、訪日外国人旅行者にとっては納めるのが当たり前の「税金」と言っても過言ではありません。たった3年前には国内企業が8%の手数料しか請求していなかったのに対して、外資系企業は20%と高い設定でした。しかし現在では、中小企業でもAPIを通じてホテル客室在庫を獲得出来るようになったため競争が激化し、以前のような開きはなくなりました。

<ホテル業界以外での影響>

ここまではホテル業界についてメインに話してきましたが、それ以外にも可能性のある市場はあります。体験(Experience)の分野は既に大きな成長を見せており、Veltra(ベルトラ)や楽天傘下のVoyagin(ボヤジン)が、地域特有の珍しく面白い様々な体験を日本全国で提供しています。これらの企業はViator、GetYourGuide、Klook、KKdayといった大手外資系企業よりも地域の業者と更に素早く親密に物事を進めていくことを目指しています。消費者向けの分野では、体験の他にもレストラン予約、イベント、手荷物一時預かりサービス、観光ガイド、通訳を含む様々な商品及びサービスに将来性があると個人的に感じています。消費者向け以外では、地域の旅行会社や設備や情報サービスコンテンツの供給者との企業間取引(B2B)があります。企業間取引では国際支払い、検索エンジン最適化(SEO)、販売管理、アクセス解析、翻訳等の多くの専門技術が必要とされています。

<API導入に時間を要している理由>

国際旅行事業でAPIが必要不可欠だと言いましたが、ではなぜ日系企業はAPIを導入するのに時間を要するのでしょうか。私は文化的、技術的な障害が理由だと考えています。従来から日系企業は縦の関係が強く、他社との情報共有に消極的でした。これは企業としての生存競争を勝ち抜く為に必要な戦略でした。しかし、経営資源が豊かな大手企業と創造性豊かなベンチャー企業が協力することで先進的な商品及びサービスが世界中で生み出されるのに対し、日系企業は信頼と情報管理に関する懸念により世界に遅れを取っています。無論、全ての日系企業に当てはまる訳ではありません。しかし企業文化を変えることは困難なため、日系旅行会社が世界に追いつくためには、ベンチャー企業が資金力を手にして自社自身に大きな投資をすることが、外資系企業に並ぶ方法でしょう。AI(人工知能)、言語、文化の違い、労働力不足等の問題を乗り越える為に、これらはの要素は今後重要な役割を果たす様になるでしょう。ベンチャー企業は地域との強い関わりや新しいものを生み出そうとする意志を持つことで、他社の経営資源に依存している外資系オンライン旅行会社に対しても十分な勝機が見込めると私は考えています。外資系オンライン旅行会社の経営戦略は今のところ順調ですが、訪日外国人旅行事業が成熟して常連客ばかりになった際には、より珍しく、面白い体験を求める様になります。そして、ベンチャー企業が独自性のある体験を提供する事の出来る立場として需要を満たすことになるでしょう。これからの変化は旅行業界全体にとって非常におもしろいものになるでしょう。

【日本を愛する一人の外国人の思いから始まったストーリー】

ジャパン・トラベルを立ち上げた代表のテリー・ロイドは 25 歳の時にワーキングホリデーで初来日をし、その後日本に移住し以降 35 年間日本に住んでいます。そして 2011 年 3月 11 日に起こった「東日本大震災」がジャパン・トラベルが立ち上がった理由です。日本周辺における観測史上最大の地震と福島原発事故で日本に来る外国人の減少を危惧したテリーは、日本に観光客を呼び戻すため、ジャパン・トラベルの前進となるウェブメディア『Japantourist.jp』を立ち上げます。そして 2013 年に『外国人による、外国人のためウェブサイト』JapanTravel.com を立ち上げました。

【外国人による、外国人のためのウェブサイト】

一貫したコンセプトで活動していくうちに私の活動は単なる「メディア運営」と「旅行業」だけではなくなりました。今では地方自治体・企業様と連携し「Web サイトの制作・運営管理・プロモーション」、13 か国語への「翻訳業務」、「SNS の運用管理・プロモーション」、「自社コンテンツ開発」、「オリジナルツアーの造成・販売」など事業は多岐にわたるようになりました。私たち『外国人による、外国人のためのウェブサイト』をコンセプトにしていますが、ウェブサイトだけに固執しているわけではありません。すべては「外国人がより日本での時間を有意義に過ごせしてほしい」という思いで活動しています。

そして私たちはメディア運営は大事にしつつも、ジャパン・トラベルに来たらインバウンドに関する商品がすべて揃う「スーパーマーケット」のような存在を目指します。

そのためニュースレターでは、外国人スタッフが気になる「ニュース」、スタッフの「一言」、過去の「プロジェクト」を紹介していきます。日本観光への愛情、情熱をもち社会にとって意味のあるプロジェクトやニュースを生み出していきますので、これからもジャパン・トラベルの成長を見守って頂けますと幸いです。

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