海外観客の受け入れを断念した東京五輪、インバウンド業界にとっての恩恵はあるのか?

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大会招致の意義のひとつでもあった海外観客

「皆様を、『おもてなし』と呼ばれる、日本特有のホスピタリティーにより、心よりお迎えいたします!」

2013年9月、滝川クリステルさんが国際オリンピック委員会(IOC)の五輪招致スピーチでこう表現した通り、まさに国内・海外からの観客への「おもてなし」とは、東京五輪招致の真髄とも言えるものでした。それから8年後、現実は皮肉的な結果となります。今年3月20日、大会組織委員会、政府等は、東京五輪・パラリンピックにおける海外からの一般観客を巡り、受け入れを見送るという正式な決定を出しました。世界各地での相次ぐ新型コロナウイルス変異株の出現や、国民の強い不安が背景にあるためです。もともと、100万人規模の観客が来日するという見込みのもと、オリンピックによる観光立国に期待を寄せていた日本にとって、これはまさに苦渋の決断となりました。

関西大の宮本勝浩名誉教授は、海外客受け入れ見送りによる経済損失は2360億円に上ると推測しています。さらに、政府が新型コロナ特別対策として掲げる「まん延防止等重点措置対象地域で行われる試合の場合、国内観客にも「上限5000人かつ収容率50%以下」と受入数に制限をかける方向で検討中の様です(6月15日現在)。

海外からの観客が居ないという、まさに未曽有の事態のもとでオリンピックを開催した場合、インバウンド業界にとってなにかしらの恩恵はあるのでしょうか。

厳しい状況でも、恩恵はまだ存在する

世論としては心配を訴える声が目立つ五輪開催ですが、こうしたコロナ渦中で五輪を開催する意義として、まず「実際に今すぐ日本を訪れる事が出来なくても、日本の魅力を多方面でプロモーション出来る」という点が挙げられます。多くの国や地域から選手たちが集まる五輪を主催した場合、おのずとそれを通して日本への注目度やメディアの露出度は上がると予想できます。

これまで日本に関して無関心だった方々にも満遍なくアプローチが出来、次の旅行先として検討してもらえる可能性があるという事は、長期的に見た場合、インバウンド業界にとってプラスとなるのではないでしょうか。

コロナ渦によりすぐの訪日が叶わなくとも、世界中に向けたプロモーションが功を奏したお陰で、「行きたい!」という熱烈な反応を海外からも引き出した例として、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(JSJ)が今年2月に新しく開業した新エリア、「スーパー・ニンテンドー・ワールド」が挙げられます。USJ はこれまでも、公式ウェブサイトの多言語化を初めインバウンド対策に注力してきました。

USJ公式Facebookアカウントが、昨年11月30日に新エリアのオープンについて投稿したところ、シェアが2,600件、コメントが1,600件、いいねは6,300件にも上りました。コメント欄には、「また日本に行く理由がひとつ増えた」「国境が開くのが本当に待ち遠しい」といった外国語でのコメントが相次いでいます。

コロナ渦を乗り越えた先にある「オリンピック・レガシー」こそが重要

IOCは、公式のブックレット中で「五輪を開催するという事は、その開催地のコミュニティー、イメージ、そしてインフラ構築において持続的な恩恵をもたらす」としています。その上で、こうした五輪後も続く効果を「オリンピックレガシー」と定義づけ、主にスポーツ、社会、環境、都市、そして経済の5つのカテゴリーに分けられるとしています。注目すべきは、これは観戦者による収益や国内外による消費行為といった、いわゆる五輪開催による「直接的効果」とは分けて考える必要があるという点です。

2012年のロンドン大会は、まさに五輪後の長期的な地域社会構築に貢献した成功事例の一つです。ロンドン東部地区の開発により、元選手村の住宅地としての再利用や、欧州最大規模のショッピングモール建設を達成したことが、持続的なコミュニティー構築に繋がったと言います。

今年3月21日にIOCが公式Youtubeチャンネルで公開した動画によると、ロンドン五輪が開催された2012年から今日までの約9年間のうち、先述のロンドン東部地区でなんと110,000の雇用が算出されたという事です。

それでは、東京五輪が目指すべきオリンピックレガシーとは何でしょうか。そのひとつは、やはり史上初となる「パンデミック下での五輪」の新たな在り方や、感染症対策への知見というレガシーと言えます。海外からの一般観客が来ないとはいえども、各国メディアからの来日記者数は6000人、メディア関係者は2万人に上ると推定され、結果は数万人規模が来日するとされているからです。

コロナ渦中でも魅力的なインバウンド事業プロモーションを展開し続ける事や、感染を抑えながらも五輪を成功させるためのノウハウを構築する事こそが、東京五輪後の持続的「レガシー」、さらには観光立国に繋がるのではないでしょうか。

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